損害賠償・慰謝料



A.債務不履行に基づく損害賠償請求権


B.不法行為に基づく損害賠償請求権


C.慰謝料請求権


D.民法/債務不履行関連


E.民法/不法行為関連





A.債務不履行に基づく損害賠償請求権(民415条)
要件
  1. 時効(知った時から5年、権利を行使することができる時から10年又は20年)になっていないこと。(民166条)
  2. 債務不履行があること。(民415条)
  3. 債務者に帰責事由があること。(民415条)
  4. 損害あること。(民415-416条)
  5. 債務不履行と損害の間に因果関係があること。(民416条)
種類
  • 履行遅滞:履行期を過ぎても債務者が履行しない
  • 履行不能:履行可能であったが、履行不能になる
  • 不完全履行:約束された完全なものでなない履行
債務不履行
  • 契約そのものが履行されない
  • 契約上の付随義務に違反している
付随義務
  • 安全配慮義務
  • 情報提供義務
  • 契約交渉継続義務
  • 契約関係継続義務
  • 損害軽減義務
  • 再交渉義務



B.不法行為に基づく損害賠償請求権(民709条)
成立要件・立証責任
  1. 加害者に故意又は過失があること。(民709条)
    ⇒ 立証責任:被害者
  2. 被害者の権利が侵害されたこと。(民709条)
    ⇒ 立証責任:被害者
  3. 被害者に損害が発生したこと。(民709条)
    ⇒ 立証責任:被害者
  4. 加害行為と損害の間に因果関係があること。(民709条)
    ⇒ 立証責任:被害者
  5. 加害者に責任能力があること。(民712-713条)
    ⇒ 立証責任:加害者(責任能力がないことを証明)
  6. 違法性阻却事由がないこと。(民720条)
    ⇒ 立証責任:加害者(違法性阻却事由があることを証明)
  7. 時効(知った時から3年又は5年、不法行為(=権利を行使することができる時)から20年)になっていないこと。(民724条)
不法行為の例
  • 生命・身体侵害:例)交通事故
  • 物件侵害:例)不法占拠
  • 債務者による債権侵害:例)医療ミス
  • 生活妨害:例)騒音・臭気
  • 身分権侵害:例)不倫相手
  • 名誉毀損・プライバシー侵害
請求権者
  • 被害者本人(胎児を含む)
  • 被害者が生命侵害と同程度の障害を負った場合
     ⇒ 被害者の父母、配偶者、子等
  • 被害者が死亡した場合
     ⇒ 被害者の父母、配偶者、子、被害者の相続人等



C.慰謝料請求権
慰謝料(民710〜711条)
 精神的苦痛あっての慰謝料です。前提となるのが、不法行為の存在であります。



D.民法/債務不履行関連(令和2年4月1日施行)
第166条(債権等の消滅時効)
  1. 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
    1. 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
    2. 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
  2. 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  3. 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
第167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
第412条(履行期と履行遅滞)
  1. 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
  2. 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
  3. 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
第412条の2(履行不能)
  1. 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
  2. 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
第413条(受領遅滞)
  1. 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
  2. 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。
第413条の2(履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由)
  1. 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
  2. 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
第414条(履行の強制)
  1. 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
  2. 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
第415条(債務不履行による損害賠償
  1. 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
  2. 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
    1. 債務の履行が不能であるとき。
    2. 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
    3. 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
第416条(損害賠償の範囲)
  1. 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
  2. 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
第417条(損害賠償の方法)
 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
第417条の2(中間利息の控除)
  1. 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
  2. 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
第418条(過失相殺)
 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
第419条(金銭債務の特則)
  1. 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
  2. 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
  3. 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
第420条(賠償額の予定)
  1. 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
  2. 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
  3. 違約金は、賠償額の予定と推定する。
第421条
 前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。
第422条(損害賠償による代位)
 債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
第422条の2(代償請求権)
 債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。



E.民法/不法行為関連(令和2年4月1日施行)
第709条(不法行為による損害賠償
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条(財産以外の損害の賠償)
 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
第711条(近親者に対する損害の賠償)
 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
第712条(責任能力)
 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
第713条
 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
  1. 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
  2. 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
第715条(使用者等の責任)
  1. ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
  2. 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
  3. 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
第716条(注文者の責任)
 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
  1. 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
  2. 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
  3. 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
第718条(動物の占有者等の責任)
  1. 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
  2. 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
第719条(共同不法行為者の責任)
  1. 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
  2. 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
第720条(正当防衛及び緊急避難)
  1. 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
  2. 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
第721条(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
第722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
  1. 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
  2. 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
第723条(名誉毀損における原状回復)
 他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
  1. 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
  2. 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
第724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。



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